テントのブログ

漫画家デビューを目指す道のりや、自作のゲーム音楽など創作活動全般について綴ります。また雑記なども書きます。

【ゲーム音楽語り004】故すぎやまこういち先生とファミコン音源

ファミコン音源とゲームボーイ音源は私以上に使いこなしている方がたくさんいらっしゃるので、詳しい解説はそちらの方々にお任せして、故すぎやまこういち先生のドラクエの音楽について語りたいと思います。

 

すぎやまこういち先生の何が凄いかというと、

 

ドラクエ1の発売年には既に55歳だった

・ハードではなくゲームの制約を考えて、その中で最高の音楽を作っていた

ファミコン音源で生音に近い音色を表現することにこだわっていた

 

等々。ファミコンの時代は、親にファミコンを捨てられたというクラスメイトがよくいました。そんな「ゲームは悪」という時代に(今もまだそういう意識が根強いですが)、すぎやま先生は歌謡曲の世界から飛び出し、ゲーム音楽という世界を開拓してきたわけです。昨今、ようやく「何かを始めるのに年齢は関係ない」という風潮になりつつありますが、時代の風潮なんて関係ない、と思ってしまうようなご年齢です。

 

ファミコンドラクエは4まで発売されたわけですが、音楽で進化を見せなくてはならない。ハードの制約は変わらないので、かなりの苦行だと思うのですが、すぎやまこういち先生にとってはどうだったのか、容易なことだったのでしょうか、それとも。

 

ドラクエ1の音楽は、タイトルBGM、竜王戦BGM、エンディングBGM、ME以外は2音しか使っておらず、音色のエンベロープも簡単なものしか使っていないとYouTubeで知り、舌を巻きました。さらに驚いたのが戦闘BGMがうねるようなコード進行であったこと。コード進行をどんなに作り込んでも、確かに容量やゲームへの負荷には関係ありません。この着想はできるでしょうが、実際にこれをやってのけることができるかどうかは音楽家として相当の手腕がないと難しい…まるで食戟のソーマを見ているようです。

 

2は、BGMに3音とノイズ1音まで使うようになり、曲の進化が分かりやすく見て取れるようになりました。2で特徴的なのがデューティー比の時間変化。これで、12.5%、25%、50%、75%(実質25%と同じ)の4種類しかなかった矩形波同士を組み合わせることで、音の表現の幅が広がっています。2の戦闘BGMも狂っており、プレイヤーを飽きさせないこだわりを感じます。

 

3は社会現象にもなり、フィールド曲の「冒険の旅」は聴き覚えがある方は多いのではと思います。新作が出るにつれて戦闘曲が凄くなっていくのは、すぎやま先生ご自身も苦行だったのではないかと思うほど。「戦闘のテーマ」の冒頭の何音鳴っているのかわからないような高速で音が鳴る部分は、曲として純粋に凄まじい。また、すぎやま先生の天才ぶりとこだわりを感じるのが3から顕著になった「可能な限り生音に近い音をファミコン音源で再現しようとする試み」で、「ジパング」は日本の雅楽そのもの。

 

ファミコンドラクエシリーズとしては最後になる4は、拡張音源はおろか、ノイズもDPCM音源も使っていないにもかかわらず、タイトル曲の「序曲のマーチ」が更に進化しています。通常戦闘曲「生か死か」も、どういう作りになっているのかわからない変拍子イカしてます。4章の通常戦闘曲「ジプシーダンス」は、民族楽器を矩形波で表現されており、特に伝説的な曲だと思っております。

 

このようにドラクエの音楽の凄さは、ファミコンの内蔵音源の制約下で作っていることにあると思っています。ファミコンDPCM音源を内蔵していたり、拡張音源を使って8音くらいまで鳴らせたりするのは、それはそれで技術的に凄いのですが、「お金がないなら作ってしまおう」という発想ではなく、「お金がないなら、工夫して優雅な生活をしてしまおう」というような考え方にすぎやま先生の凄みを感じます。

 

自分もすぎやま先生のように「ファミコン内蔵音源で生演奏に近い音を」をモットーにいくつか曲を作っております。

 

youtu.be

「死者を追う」

 

と言っておきながら、しょっぱなからロックマン風の曲です。友人に作って欲しいと言われたので。ロックマンファミコン音源のデジタルな音質を逆手にとって作られている感じがします。

 

youtu.be

「みなぎる闘志」

こちらはドラクエの戦闘曲を目指し、実際の楽器に近い音を選んでオーケストラ風に作った曲です。とはいえ、オーケストラ風の曲は楽器の知識がないと作れないので、この曲を実際に演奏しようとしたら難しいのではないかと思います。このあたりがすぎやまこういち先生の曲を真似しようとしても巨大な壁を感じるところです。

 

youtu.be

「小妖精の舞踊」

こちらは、アトリエシリーズ風の曲で、ファミコン内蔵音源だけで民族音楽的な曲を作ろうという試みです。DPCM音源は少し抵抗があるのですが、内蔵音源ではあるので使ってみました。