スーファミ音源の同時発音数が8音ということを知ったのはいつ頃だったか。
拙作の漫画「ゲーム音楽が手放せない」の持ち込みをして、今の20代の方に「同時発音数」という用語が通じないことに驚きました。
マニアックな用語ではあり、同年代でもご存知ない方もいらっしゃるでしょう。私も、同時発音数という用語をどこで覚えたのか忘れました。ファミ通か、インターネットだったかな?
同時発音数は、文字通り「同時に発音できる音の数」ということです。ニンテンドーDSの同時発音数が16音なんですが、もう同時発音数を意識する必要はないほど十分な数です。スーファミの8音も、パッと見、十分に思えるのですが…
実は、8音以内に収めただけではスーファミで鳴らせないことが多いです。
昨年、とある方から、スーファミのサウンドメモリがたったの64KBということを教えて頂きました。
多分、これだけでもピンと来ないですよね。
「64KBにシーケンス、音色、ドライバのすべてを収めないといけない」と聞いたら、どうでしょう。
詳しい方なら何となくスーファミ音源の制約の厳しさが分かるかと思いますが、このあたりは実際に作ってみないと感覚を掴みづらい所ではあります。
シーケンスは「MIDIファイルみたいなもの」というと語弊がありますが、「演奏データ」とでもいいましょうか、どのタイミングでどの音が鳴るかとか、音量や音程などを収めたデータのことです。平均的にはだいたい10KBちょっとですが、曲の長さや作り込み方によっては、64KBの4分の1の16KBを超えることもあります。
音色が一番容量を食います。スーファミの音色が独特なのは、サウンドメモリの制約のせいと思われます。基本的に波形をループさせることで容量を節約するのですが、なるべく短くしないと、少ない音色でも64KBを使い果たしかねません。容量を食いやすいのはストリングスで、ストリングスの音色と人間の耳が認識するためには、けっこう長い波形データを必要とします。
ドライバについては、開発技術がないので語りにくいのですが、プログラマさんの技術と創意工夫によって数KBには収まっていることが多いのではと思います。それでも、64KBの中に収めるとなるとけっこうな割合です。
簡単な曲なら、けっこう64KBでやりくりできるので、それほど厳しい制約ではないかも知れません。
しかし、スーファミ時代の名曲と評される曲の大半は、どうやって64KBに収めているのか疑問です。例えば、聖剣伝説2の「危機」。実にさまざまな音色が使われており、シーケンスも緻密です。憶測で申し訳ないのですが、音色データをサウンドメモリに入れたり外したりできるドライバを使ってやりくりしているのでは…と思います。そうでないとしたら、作曲者の菊田裕樹氏の手腕が凄まじいということで、それはそれで凄い偉業です。
まぁ、1990年のゲーム機なのにサンプリング音源を使えることがもう凄いんですが。ただ、長寿ハードだったこともあり、晩期のゲームは、作曲者やプログラマーが楽しんで作っていたようにも、悲鳴を上げながら作っていたようにも思え、いずれにせよ大変な苦労をしながら作られていたものと推測します。
拙作のスーファミ音源の曲を紹介させて頂きます。
「Super Fighter Soundtrack」
M3-2010春で頒布した、米国のSuper Fighter Teamが制作した「Super Fighter」のサントラです。当時は作り方をよく分かっておらず、突っ込みどころは多いです…
「胸に火を灯して」
上記のサントラ以来、12年ぶりに作ったスーファミ音源の曲です。作り方をすっかり忘れてしまっており、かなりシンプルな曲になっています。便利なことに3DSのDSN-12という音色を自作できるソフトが現れ、このソフトを使って音色を作っています。
「時空の狭間」
スターオーシャン1を意識した曲です。プログレっぽい変拍子にしました。
「光と闇のクロスロード」
こちらはユグドラユニオンを意識した曲になります。GBA音源の印象が強いユグドラユニオン風の曲をスーファミ音源で鳴らしてみようという試みでしたが、音色が明るいので、ライブアライブっぽくも聴こえます。
「ケルトの神秘」
MASTERキートンのOPテーマ風に作った曲です。ゲーム音楽にあまり興味のなさそうな作曲者の曲風を意識してゲーム音楽を作ってみるのは楽しいです。
「肖像画を追って」